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料理写真の撮影|撮り方は「作りこんで撮る」広告系か「探して撮る」雑誌系か

料理写真の撮影方法は2タイプ

広告系と雑誌系、商業写真の撮影方法

商業写真には大きく分けて、広告系の撮り方と雑誌系の撮り方がある。プロならどちらのタイプでも撮るけれど、だいたいこの二派に分かれていてどちらかを得意としている場合が多い。
広告系のカメラマンは、スタジオで撮る。セットやライティングをしっかりと作り込んでから撮る撮影方法を得意としている。食品のパッケージやカタログ、パンフレット、ポスター、ファッションなどの撮影である。時間をかけてきめ細かく作り込んだものを時間をかけて撮影するので「フィクション系」ともいえる。

一方、雑誌系のカメラマンは、おもにロケ先に出向いて現地で撮影する。持ち歩ける程度の機材で、セットは組まず、ライティングも自然光や屋内のミックス光だったりと、その時々によってちがう現場主義である。画面に入れたくない邪魔なもの、メニューやおしぼりや背景にあるものを移動させたり、補助光を使ったりすることもあるが、どちらかといえば対象物の良いところを探して撮る「ノンフィクション系」の撮影である。

ノンフィクション系の動物写真家は念力を送る

撮影タイプのもう一派。動物写真家の岩合光昭さんが、動物を撮るときのコツを話していた。猫や犬など、動物の生態を理解して行動を「予測し」、ひたすら忍耐強く「待つ」。そして、いい表情やアクションが撮れるよう、動物に「念力を送る」のがポイントだそうだ。

料理は食べてこそ。美味しい料理はそのままで美味しそうな写真になる

組立通信の手がける撮影写真は「ノンフィクション系」である。ロケ先の厨房で撮影中にシェフ渾身の一皿が登場する。まさか水滴を吹き付けたり、油を塗ってシズル感…などの作り込みなど許されない。出てきたラーメンを盛り付け直したら、店主はムッとくるだろう。料理とは、盛り付けられて供された瞬間が一番美しい「瞬間芸術」なのだ。
料理を作って撮影する案件となると、レシピ提案もセットなので、ひたすら料理を作り、料理を撮影し、そして食べる。すべてをきれいに食べ切って撮影が終了する。
スタジオで広告写真に携わっていたころ、撮影のためにシズル感を作り込み、触りまくって不自然にてらてら光らせた「食べられない一皿」を、撮影終了と同時にゴミ箱に処分する行為に、ついに慣れなかった。食べ物に申し訳ないし、写真に映ったものは、もはや食べるものに見えなかった。食べて美味しいものは、撮っても美味しいはずなのだ。

料理写真の撮り方のコツ

美味しい瞬間を探して撮った「ノンフィクション系雑誌派」の料理写真は、スーパーマーケットの店頭に使うと、意外に効果を発揮する。日本のスーパーマーケットで見かけるパッケージ写真や店頭ツールのほとんどが、しっかり作り込んだ「シズル感あふれる」広告写真だから、どれもこれも似ていて、印象に残りにくい。どこのメーカーの商品かも印象に残らない。みんな美形だけれど見分けがつかない、団体で踊っているアイドルグループのようなものである。

「似たりよったり」のところに、ノンフィクション系の料理写真が入ると異彩を放つ。人為的に作り込んで同じような顔をした広告写真を並べても気にも留めてもらえないが、見慣れないものがあると脳が気になるのだ。
目立つ、という点では、その業界で習慣的にやっている方法はあえて選ばない方がいい場合もある。広告に見えない作り方も、使い方なのである。

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