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バーでの最初の注文は「とりあえずハイボール」|由来は酒場のネタに

ハイボールはカクテルの一つ

お酒をソーダで割る飲み方が「ハイボール」

バーと言えば洋酒、洋酒と言えばウイスキー、ウイスキーと言えばハイボールを連想する人も多いかと思います。最近はハイボールが流行っているので、和食のお店でもハイボールを飲むことができます。少し前まで居酒屋さんでは「とりあえずビール」が最初の一杯の定番でしたが、最近は「とりあえずハイボール」という人も少なくありません。
そんなハイボールですが、そもそも「ハイボール」って何なのでしょう?

一般的にハイボールはウイスキーのソーダ割のことを指します。でもバー的には、ハイボールは「飲み方の一つ」で、広義にはハイボールは「カクテルの一つ」です。なので、ブランデーなら「ブランデー・ハイボール」(別名:フレンチハイボール)ですし、ジンならジン・ハイボール、ウォッカならウォッカ・ハイボールなど、お酒の種類の名前と合わせて呼ぶことになります。

ウイスキーのハイボール バー一年生写真 組立通信コンテンツサイト

私がお酒に関心を持ち始めた1983年ごろは「酎ハイ」の大ブームでした。つまりこれは「焼酎のハイボール」です。それよりずっと以前から「ハイボール」というウイスキーカクテルは存在してて、1960年代に隆盛を極めたサントリーのバーチェーン「トリスバー」ではトリスのソーダ割「トリハイ」が大流行していました。そういう背景もあり、バー的に言っても、単に「ハイボール」ならウイスキーのハイボールということになります。
「何だ、結局バー的に言っても『ハイボール』はウイスキーのソーダ割のことじゃないか」と混乱されたかも知れません。が、一般的なハイボールとバー的なハイボールは若干ニュアンスが異なります。

ハイボールは「ソーダ割」なのになぜハイボール?

ハイボールの語源は「ゴルフ場」か?「鉄道の信号」か?

バーでは、よくお酒のうんちくが語られます。酒場ネタの一つとして、ウイスキーのソーダ割を「ハイボール」と呼ぶようになったかの由来をご紹介しましょう。だいたい定番の説として「ゴルフ場由来説」「鉄道の信号由来説」の二つの説が紹介されています。

ゴルフ場由来説

スコットランドのゴルフ場で、ウイスキーのソーダ割を飲んでいた人のところへ、高々と打ち上げられたボールが飛び込んで来て「ハイボール!」と叫んだという説と、同じくゴルフ場の酒場でバーテンダーが当時めずらしかったウイスキーのソーダ割を出していたところ、客から「これは何ていう酒だ?」と問われたときに、バーテンダーが高々と打ち上げられたショットを見ながら「ハイボール」と答えたという説。

鉄道の信号由来説

アメリカの西部開拓時代の鉄道では、鉄塔に吊るしてあるボールを下げる停止の合図(ロー・ボール)とボールを引き上げる進行の合図(ハイ・ボール)になっていたという話。その合図を出す飲んべの信号係がウイスキーのソーダ割を飲みながら進行の合図を出すたびに「ハイボール!」と叫んでいたという説や、駅のそばのバーでウイスキーのソーダ割を飲みながら汽車を待っていた乗客らが、鉄塔にボールが上がった合図を見たとき「さぁ行くぞ!」の意味で「ハイボール」と叫んでいたという説。

どれが正しいのか、どれも後付けなのかは不確かですが、こんな話を知って飲むのと知らないで飲むのでは、ハイボールの味わいも変わってくるかも知れませんね。

サントリー「ウイスキーの用語集」

バーと居酒屋の「ハイボール」の違い

普通、居酒屋さんなどで扱うハイボールは1銘柄です。例えば「角ハイボール」「トリスハイボール」「ブラックニッカハイボール」など、決まった銘柄のウイスキーをサーバーから注いで供します。

一方、洋酒専門店であるバーにはたくさんの銘柄のウイスキーがありますので、単に「ハイボールを下さい」と言うと、バーテンダーさんから「何のハイボールになさいますか?」となるわけです。ここれも、バー初心者がバーへ足を運ぶのをためらわせるハードルの一つになっているのだと思います。例えると、お寿司屋さんで「寿司を下さい」とか八百屋さんで「野菜下さい」と言っているようなもので、お店からすると「何の?」となるのです。

しかし、バー初心者、ことに洋酒に興味や関心が薄い人がウイスキーの銘柄を知っていたり、その銘柄がスタンダードな品なのか高級銘柄なのかは判断できません。そこで登場するのがバーテンダーです。
バーテンダーは洋酒の専門家であるほか、接客のサービスマンです。お酒のことで分からないことがあれば何でも聞いてみてください。

といっても、バー初心者には「何を聞いていいかすら分からない」でしょう。カウンター席に案内されて、見たこともないラベルのボトルがズラリと並ぶボトル棚に圧倒されるかも知れません。が、そこで気圧されてはいけません。誰でも最初は初心者です。初めて『スターバックス』へ行って注文に戸惑った時のことを思い出してください。あの時と同じようなものです。

さぁ、せっかく小さな勇気を振り絞ってバーの扉を開けて入ったのですから、今いちど勇気を振り絞ってバーテンダーに話してみましょう。大丈夫、何と言っても私たちは目の前のバーテンダーにとって「大切なお客様」なのです。取って食われるようなことはありません。

ご注文は?

ハイボールを下さい

どれになさいますか?

バー初心者がやってはいけないオーダー

「どれになさいますか?」と聞かれたら

ここでビギナーが「やってはいけないこと」の一つが「知ったかぶり」をすることです。ズラリと並んだボトル棚にも、一つや二つ見覚えのある銘柄があるものです。それが例えばサントリーの『山崎』や 『響』、ニッカの『竹鶴』など有名な国産ウイスキーだったりだとします。多くのボトルがアルファベットで書かれてて読み方もおぼつきませんが、漢字で書いてあるだけで安心です。が、ここで早まってはいけません。

もちろん、それらをオーダーするの「ダメ」とはいいません。いずれも日本のウイスキーを代表する名酒です。が、普段は居酒屋で「トリスハイボール」や「ブラックニッカハイボール」など大衆的なウイスキーを飲んでいる人が『山崎』『響』『竹鶴』のお値段を知らずにオーダーしてしまうと、お勘定の時に目をむくことになりかねません。『山崎』『響』『竹鶴』が大好きで、相場の値段を知っていて飲みたいと思って注文するのと、何も知らずに知ったかぶりで注文するのとでは、リスクヘッジが違います。

では、バーテンダーから「どれになさいますか?」と尋ねられたら、何と答えましょう?ここは正直にこう言えばOKです。

とりあえずハイボールにしようと思うんですけど、バーのビギナーなので、何を注文していいのか分からないんです。

「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」とまでは言いませんが、分からないから聞くのです。それで問題ありません。このあと、アドバイスを求められたバーテンダーは「普段は何をお飲みですか?」「いつもはどんな感じのお店に行かれるのが多いですか?」「ご自宅では何をお飲みですか?」などなど、医者の問診のようにいろいろ重ねて尋ねてくることでしょう。そして見合ったハイボールのアドバイスがあるはずです。

バーテンダーは洋酒の専門家であると同時に、洋酒愛にあふれています。なので、お客さんには「洋酒を好きになってもらいたい」と思っているし、それがバービギナーの洋酒初心者なら、なおさらです。

逆に、バーテンダーは洋酒についていろいろ尋ねられると、嬉しくてホイホイなんでも答えてくれるでしょう。バーテンダーに限らず「その道のプロ」と言われる専門家は、自分の専門分野を誰かに知ってほしい、伝えたい、話したいと思っているものです。

さぁ、もうこれで、バーに行ってみたい初心者から卒業したも同然です。目の前には、美味しいハイボールと幸せな時間が供されることでしょう。


● ウイスキーの種類 ●

モルトウイスキー 大麦を発芽させた「麦芽」を原料に造られたもの。ウイスキーが誕生したそもそもの姿がこのタイプのウイスキー。
造られた蒸溜所ごと、製法ごと、樽ごとに個性が異なる。それぞれの個性の違いを楽しむマニアなファンが好んで飲むウイスキー。
ザ・マッカラン/ザ・グレンフィディック/山崎/白州/竹鶴など。
グレーンウイスキー トウモロコシ、小麦、ライ麦などの雑穀を原料に造られたウイスキー。モルトウイスキーのような「ピート香」もなく、柔らかく穏やか。
「サイレントウイスキー」とも呼ばれている。通常、ブレンド用に使われるので、単独で製品になることはない。サントリーの「知多」やニッカの「カフェグレーン」などは珍しい例。
ブレンデッドウイスキー モルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドしたウイスキー。グレーンウイスキーが開発され、モルトウイスキーとブレンドすることで飲みやすくなりウイスキーの市場が一気に広がったと言われる。市場に出回っているウイスキーの約9割がこのタイプのウイスキーで、スタンダードの普及品から高級ウイスキーまでさまざまなバリエーションがある。通常、モルトウイスキーが20~30%対グレーンウイスキーが70~80%でブレンドされている。
ホワイトホース/ジョニーウォーカー/シーバスリーガル/響/角瓶/スーパーニッカ/ブラックニッカ/トリスなど。


● モルトウイスキーの種類 ●

シングルモルト
ウイスキー
単一の蒸溜所で作られたモルトウイスキー。一般的に「モルトウイスキー」と言えばシングルモルトウイスキーのことを指す。蒸溜所それぞれの個性が出ており、その個性を楽しむ。
シングルカスク
ウイスキー
単一の蒸溜所で作られたモルトウイスキーの中でも、他の樽のモルトウイスキーと合わせることなく一つの樽で商品として完結しているウイスキー。蒸溜所の個性はもちろん、樽それぞれの個性を楽しむ、マニアックなウイスキー。
ヴァッテドモルト
ウイスキー
異なる蒸溜所のモルトウイスキーを合わせて作ったもので、ピュアモルトウイスキーとも呼ばれている。グレーンウイスキーを使わずモルトウイスキーだけで造るブレンデッドウイスキーとも言える。
日本の洋酒市場を切り拓いた「二本箸作戦」の水割り
今はウイスキーの飲み方としてはハイボールが全盛ですが、ハイボールが流行する前まではウイスキーと言えば「水割り」が主流の飲み方でした。1970年ごろ、日本の景気が右肩上がりに上がって洋風化も進み、ウイスキーなどの洋酒もバーやパブ、スナックといった洋風の店を中心に飲まれていました。
しかし、洋酒が洋風の店で消費されるだけでは、今後の伸びが期待できません。そこでサントリーが「ダルマ」の愛称で親しまれた「オールド」を軸に、寿司や天ぷら店、割烹などの和食のお店はもちろん、家庭でもウイスキーを飲んでもらおうとして「二本箸作戦」という一大プロモーションを仕掛けたのでした。その「作戦」の一つがウイスキー&ウォーターの「水割り」という飲み方提案だったのです。

和食店や家庭でメインで飲まれている日本酒はアルコール度数は15度前後、ビールも5度程度と低いのに対し、当時の特級ウイスキーである「オールド」は43度ありました。それを水で割って日本酒程度の度数に引き下げ「飲みやすい洋酒」としてアピールしたのでした。ドブ板営業や広告展開とも相まって、「オールド」とともに水割りという飲み方が広まり日本の洋酒市場を切り拓いてきたのでした。

今は「角瓶」「トリス」「ジムビーム」に主力の座を渡しているサントリーの「オールド」ですが、1980年には空前の1240万ケースを出荷し「世界でいちばん売れているウイスキー」として名を馳せました。「水割り」で日本の洋酒市場をけん引した名酒「オールド」。バーのボトル棚で見かけたら、ぜひ水割りで飲んでみて下さい。