仕事ができるとかできないとかいうけれど、仕事ができないってこういうことかと考えてしまう体験をしてしまった。SEOって恐ろしい。WEB検索で上位表示されたサイトを熟読して信用して発注したら、失敗した。自分で選べないというのに固定担当者制で、担当者とメールが噛み合わない。仕事が前に進まない。先払いなのでキャンセルもできず。
新分野の自社案件なので無理にすすめることもなく、やむなく一時休止にするうち、いつしか季節はおでんからホタルイカへと移ろっていった。重い腰を上げて仕事再開の連絡をしたら、担当者が変わっていた。
ところが新しい担当者さん、同じ会社とは思えない仕事っぷりの良さ。「どうなってますか」とこれまでのように進捗を聞きたくなることもなく、さくさくとメールで進行し、ストレスを感じない。仕事ができる人であることがメールのやり取りだけで伝わってくる。退社されたという前任の担当者の方は、働くことに向いてないタイプだったのかもしれない。ふと、美容サロンのオーナーさんとの会話を思い出した。
中堅のサロンを経営しているオーナーさんは、集客にクーポンサイトを活用していて、「同じ会社でも営業担当者でストレス度が見事に違う」といっていた。
ストレス度は、仕事ができる人か仕事ができない人かにかかっている。何が違うのか、ときいてみると「対応の速度」という答えだった。
サロンのように、客ひとりに接する時間が長い仕事は、接客以外にさける時間はほとんどない。何かと電話好きな営業マンがいるけれど、突然かかってくる電話は「時間を取られる存在」でしかない。今や予約もホットペッパービューティーのシステムでネットからできる時代、空き時間にメールチェックすれば返事が届いている、というのが「できる担当者」の特徴だそうだ。仕事ができない担当者の対応速度が遅すぎてキャンペーンが遅れ、商機を逃したこともあったらしい。
そういえば、銀行は異動が多くて担当者がよく変わる。前任者まではやたらと日数がかかり、訂正印をついたり記載漏れで書類を返される機会が多かった。煩雑で細かい書類が多いので「そういう業界か」と思っていた。けれど、その後輩が担当に変わったとたん、処理速度が格段にアップした。
仕事が速い上に、準備力がすばらしい。「次回お持ちします」といった書類は翌日にはポストに入れられている。「持ち帰ってミスがあるとお待たせしてしまうので」と何度もチェックを重ね、訂正用の予備書類までかばんの中に用意してきている。「いつかいるときのために」と渡された書類が、実際に数カ月後に役立つことになった。仕事ができるその担当営業マンの仕事っぷりを見ていると、「なるべく余分な時間がかからないように」といつも頭を回転させている感じがする。
飲食店でも、繁盛しているお店は、ドリンクと突き出しが出てくるのが速い。最初はもちろん、おかわりのドリンクも速い。そして片付けにくるのも速い。ドリンクを運んできたスタッフが手ぶらで戻っていくことはなく、ついでに空いたお皿を下げて、追加オーダーをおすすめする。仕事ができるスタッフは、テーブルの上をよく見ていて、常にいい速度を保って「回転して」動いている。
料理が速いと滞在時間も短くなるので、回転率も上がる。そういう繁盛店では、たとえ口開けの暇な時間でもぼーっと立っているスタッフはいない。まして店頭に立ち、入り口をブロックしながらの呼び込み行為、などの無駄な行為はない。ガラスを拭いたり椅子の並びを確認したり、何かしら手を動かしてみんなが仕事をしている。
長らくお世話になっているクライアントの食品メーカーは、チェックバックがとにかく速い。
担当部署はじめ、リーガルチェックもほぼ「即レス」状態で、毎回、さくさくと完パケデータの納品となる。
大企業特有の、連日打合せに追われている超過密スケジュールというのに、そばで一日を観察してみたいほど、「仕事を溜めない術」が身に着いている。
担当者のほぼ全員が営業経験者であることも大きいけれど、「遅い人」「溜める人」がいないと、「仕事が進む」感がとても高い。制作業は、どうしても制作中は人とのやり取りは後手になるから、深く深く反省してしまう。
そして速い動きには、それ自体がエネルギーを発生させる力がある。物理学上、止まっているものに何かを動かす力はない。
業界を問わず、年齢も問わず。「仕事ができる人の特徴」は、特殊な能力ではなく「速さ」かもしれない。