バーに行ってみたいなら、実際にバーへ行ってみるのが手っ取り早いです。身近にバーでお酒を嗜む気の合う人がいるなら、連れて行ってもらいましょう。山登りや魚釣りへ行くにも、まずは愛好者に連れて行ってもらってスタートしますが、バーでお酒を飲むのも同じです。
カウンター席がメインで「一人客歓迎」のオーセンティックバーでは、二人連れは問題なしです。大声でバカ騒ぎをしない限り、つまみ出されることはありません。バーテンダーといろいろお話してみてください。もう、次からは一人で訪れても大丈夫なはずです。
周りにバーで飲む習慣や経験を持つ人がいないなら、やはり一人でバーへ行くことになるでしょう。しかし、バービギナーがいきなり、いわゆる街の酒場にあるバーのドアを開けるのは腰が引けると思います。そこでおすすめは「ホテルのバー」です。それも、ちょっと名の知れた高級ホテルのバーなら、ビギナーでも安心です。ただし、いくつか注意しなければならな点があるので要注意。
まず、ハイクラスのホテルのバーは、街中にあるバーに比べて、料金もやや高めなのは心しておきましょう。当然、ラフでカジュアルな服装はNGです。気合の入ったオシャレでなくても構いません。普通に「仕事で取引先と打ち合わせ」みたいな服装でOKです。
「ホテルのバー」といってもいろんなタイプがあり、レストランを兼ねた「レストランバー」、商談や会談をする「ラウンジバー」、カウンター席のない大箱のバーという場合もあるので、事前にホテルのホームページなどで調べておきましょう。
ホテルによっては、百数十席もある大箱のバーのほか、「これぞオーセンティックバー」という重厚なバーを持つホテルもあります。もちろんお勧めはオーセンティックバーですが、せめてカウンター席を設けているバーで「カウンター席でお願いします」と、カウンター席に案内してもらいましょう。
たとえ
ちなみにバーのカウンター席は、
バーの特等席であるカウンター席。欧米ではカウンター席のことを「bar」と言い、「バー」と「カウンター」は切っても切れない深い関係です。バーにとって「バーカウンター」はある種神聖なもので、マナーにうるさいバーテンダーにカウンターに肘を付いて飲んだら注意されたという話も聞きます。
最近はマナーを注意するバーテンダーは少なくなりましたが、カウンターの上にバッグを置いたり、ノートパソコンを置いたりするのはマナー違反です。お客様最優先のホテルのバーでも、メールのチェックとばかりにカウンターでノートパソコンを開いたら「テーブルのお席をご案内させていただきましょうか」と、やんわり「お声掛け(注意)」されることになります。
バーのカウンターは、もともと調理台を兼ねていたのでテーブル席とは性質が違うのです。もっともバーに限らず、例えばお寿司屋さんのカウンターに無造作にバッグなんか置いたら即、職人さんに注意されるに違いありません。それと同じです。昔のテレビコマーシャルで、バーのシーンに「カウンターに置いていいのはグラスとタバコだけ」とうフレーズがありました。それほどに、バーのカウンターは特別なものなのです。
バーで飲むお酒のイメージと言えば、カクテルではないでしょうか。カウンターでバーテンダーがシャカシャカとシェーカーを振り、逆三角形のカクテルグラスに注いでくれる。供されたカクテルをさりげなく飲む。そんな姿にあこがれて「バーへ行ってみたい」と思われる方も少なくないのではないでしょうか。
そこで、カクテルって何? ということですが、カクテルは定義で言えば「2種類以上の材料を混ぜたドリンク」です。バー的に言えば水割りもハイボールもオンザロックもカクテルということになります。カクテルグラスの「あのお酒」のお話を……ですが、その前に。カクテルは大きく分けて2種類あります。ここは押えておきましょう。
長い脚の付いたカクテルグラスで供されるタイプのカクテルは「ショート・カクテル」といって氷は入っていません。対して、タンブラーと呼ばれるコップや細長いコリンズ・グラス、太くて低いロックグラスなど、氷を入れて供されるカクテルを「ロング・カクテル」といいます。
バーで「カクテルをお願いします」と言うと、バーテンダーは「ショートでしょうか? ロングでしょうか?」と尋ねます。これは「氷の入ってないタイプですか? 氷が入っているタイプのカクテルですか?」という意味です。
普通、カクテルは冷して供されますが、ショート・カクテルは氷が入っていないので時間が経つとぬるくなってきます。ですから、キリッと冷えている短い時間でサッと飲みます。だから「ショート」カクテルです。一方のロング・カクテルは氷が入っているので冷えが長持ちします。ゆっくりと楽しむカクテルなので「ロング」カクテルということになります
カクテルのアルコール度数は、高いものから低いものまで様々ですが、ショート・カクテルの方がロング・カクテルより度数が高いと思ってください。もちろん「アルコールを弱めにして下さい」と注文すれば、ショート・カクテルでもアルコールを落として作ってくれますが、そう言わなければアルコールは高めになるのでアルコールに弱い方はご注意を。
お店やオーダーの仕方によって違ってきますが、カクテルの王様と称される「マティーニ」はジンとベルモットで作り、カクテルの女王とされる「マンハッタン」はウイスキーとベルモットで作るなど、
アルコール度数の高いショート・カクテルのほか、蒸留酒系のお酒をストレートやオンザロックなど度数の高いまま飲む場合は、必ず「チェイサー(追い水)を下さい」と言いましょう。 別のグラスに氷水が供されますので、交互に飲みます。度数の高いお酒を飲むと舌の感覚がボケるので、チェイサーでリセットしながら飲むのです。また、水を飲むことで身体への負担も軽減されますので、なるべくチェイサーを飲みましょう。 |
ショート・カクテルのカクテル・グラスは、「ボウル」と呼ばれるお酒が入る逆三角形の部分から下へ「ステム」と呼ばれる細長い脚が伸びています。ショート・カクテルを飲むときは、
ステムだけで飲むのが不安定な場合は、「プレート」と呼ばれる底の丸い部分にもう片方の手を添えて飲んでも構いません。
また、カクテルによっては、オリーブの実やパールオニオン、チェリーなどがデコレーションとしてピンに刺さって入っている場合があります。このデコレーションは、食べてもいいし食べなくても構いません。食べる場合も、先に食べても、途中で食べても、つまみ代わりに飲みながら食べても構いません。
ちなみに、「短い時間」で飲むショート・カクテルですが、どれぐらいの時間で飲むかというと、目安としてだいたい15~20分です。氷が入らないので、グラスに注がれた瞬間がいちばん冷えていて美味しい状態で、時間が経つとぬるくなって美味しくなくなってくるからです。
とあるバーで「ショートカクテルは3~4口で飲むもの」と言われたことがあります。しかし、実際3~4口では飲めないし、時間を気にしながら急いで飲むのは無粋です。「ショート・カクテルは短い時間で飲むもの」ということを頭の片隅に置きつつ、自分のペースで飲まれてOKだと思います。
とはいえ、
ショート・カクテルのグラスは、他のグラスに比べて容量が小さいです。最近は大型化してきていますが、60ml、75ml、90mlというのが一般的です。普通、ショート・カクテルのできあがりの容量は60mlですので、見た目のバランスも飲みやすさも70mlや90mlのグラスの方が良いと思うのですが、バーによっては60mlを使い、しかもそのグラスギリギリに、表面張力でかろうじてこぼれないでいる、というような注ぎ方をするバーテンダーがいます。こういう場合は、グラスを持ち上げることができないので
これは「オールド・スタイル」や「クラシック・スタイル」と呼ばれるショート・カクテルの注ぎ方で、古典的なオーセンティックバーの流れを汲むものです。最近のバーの多くは「メジャーカップ」と呼ばれるバー専用の計量器で量って調合しますが、1950~70年ごろのバーは目分量で調合するのが当たり前でした。それで、目分量で60mlピッタリのカクテルを供するのが「名人芸」だったということです。「オールド・スタイル」は、その流儀を今に残しているバーだということです。
氷が入らないショート・カクテルに対して、
例外はあるものの、カクテルはだいたい甘い味付けがされています。そもそも
ただ、飲みやすくなっていてもアルコールです。「美味しい」「飲みやすい」といってガブガブ飲めば、後で大変なことになりかねません。例えば、もっともポピュラーなロング・カクテルと言える「ジン・トニック」ですが、使うジンや個々のレシピの差はあるとしてもアルコール度数は15度ほどあります。これは、日本酒やワインと同じぐらいの度数です。ジンとトニックウォーターに氷が溶ける量を見込んだとして、タンブラー1杯で180mlぐらいでしょうから、
ロング・カクテルはショート・カクテルより長い時間をかけて楽しめるドリンクですが、氷が溶けて水っぽくなるので、なるべく美味しいうちに。また、たまに見かけますが、飲み切ったあとの
バービギナーやカクテル初心者なら、ロング・カクテルは入り口としては広くて入りやすいと思います。自分の酒量も考えつつ、まずはロング・カクテルから始めてはいかがでしょうか?
バービギナーには口当たりの優しいロングカクテルがおすすめです。口当たりが優しくてもアルコール分がしっかりあるカクテルも多いので、あらかじめバーテンダーさんに「アルコール控えめで」とお願いするといいでしょう。
また、ノンアルコールカクテルと呼ばれるスタンダードカクテルもあるので、「お酒を飲んだ気分だけを味わいたい」という人のために、代表的なノンアルコールカクテルもいくつかご紹介します。
バー初心者はもとより、バーに行き慣れた人にも好まれるスタンダードなロングカクテルです。氷を入れたグラスにジンとライムを入れ、ソーダを注ぐシンプルさ。一般的にはライムシロップではなくカットしたフレッシュライムを使います。グラスの縁に飾ったり、果汁を絞り入れてスライスしたライムを飾ったり、カットしたライムをグラスの底に落とし込んでマドラーで潰しながら飲んだりなど、スタイルは店によって様々です。
爽やかな口当たりですが、普通に頼めば普通にしっかりとアルコールが入っていますので、アルコールに強くない人は「アルコール控えめで」と注文します。
バーによってはジンの銘柄を聞かれることがありますが、知ったかぶりをせず「アルコール度数が低めでスタンダードなもので」とオーダーしましょう。
ベースのジンをウォッカに代えるとウォッカ・リッキーに、テキーラに替えるとテキーラ・リッキーになりますが、初心者はポピュラーな「ジン・リッキー」が無難でしょう。
チェーン系の大衆居酒屋さんでもメニューにあるのがジン・トニックです。それほどポピュラーなロングカクテルですが、バーで飲むとまた格別です。氷を入れたグラスにジンとほろ苦さと柑橘由来の香りと甘さを含んだ炭酸ソーダ「トニック・ウォーター」を注ぎます。これに、レモンやライムの果汁を加えたり、カットまたはスライスしたレモンやライムを飾ったり落とし込んだり。あるいは、柑橘系リキュールやビター系リキュールを加えたりするお店もあります。
居酒屋さんでも供されるカクテルなので、バーテンダーからすれば「バーでのジン・トニックは居酒屋さんのとは違うぞ」と、工夫を加える場合が多いようです。こちらもジン・リッキーと同じくアルコールはしっかり入っていますのでご注意を。また、ベースのスピリッツを替えるバリエーションもありますが、やはり定番中の定番ロングカクテルなので「バーでのジン・トニックの実力」を楽しんでください。
こちらもチェーン系居酒屋さんなどでも供されるおなじみのロングカクテルで、どちらかと言えば女性に好まれる印象です。氷を入れたグラスにウォッカとライムジュースとジンジャエールを注いで、カットライムかスライスライムをデコレーションするのがポピュラーです。ジンジャエールに代えてノンアルコールのジンジャー・ビアを使ったり、ジンジャー・シロップやアルコールの入ったジンジャー・ワイン(リキュール)にソーダを使うなど、お店によって違ってきます。
キレのある生姜の風味とライムの酸味から、ロングカクテルにしてはパンチがありアルコールもしっかりありますのでご注意を。併せて甘さもあり、生姜の風味が好きな人には飲みやすいと思います。
ジンジャー・ビアを使い、銅製のマグカップを用いるのが「正統」とされているので、こだわりの強いバーではジンジャー・ビアを使って銅製のマグカップで供されます。
バーでポピュラーなロングカクテルの一つです。「ソルティー・ドッグ」はイギリスの船乗りの甲板作業員を揶揄したネーミングだと言われています。ウォッカにグレープフルーツジュースというシンプルな組み合わせで、グラスの縁を塩でデコレーションするのが華やかさを演出する大きなポイント。
これは「スノー・スタイル」というデコレーションで、グラスの縁をカットしたグレープフルーツの果汁で濡らし、結晶の大きいカクテル用の塩で飾ります。そこへ氷とウォッカ、グレープフルーツジュースを注いで作ります。
塩が苦手や控えている人は「デコレーションなし」や「半分だけ」とオーダーしても構いませんが、この塩のデコレーションがソルティー・ドッグ「らしさ」なのです。なるべくそのまま注文しましょう。なので、普通は塩と一緒に飲みますが、塩を控えている人は飲み口の塩を摘んで拭き取っても構いません。また、塩好きな人は、グラスに落とし込んで飲んだり、グラスの縁をぐるりと回しながら飲んでも構いません。飲みやすいカクテルなので、アルコールが弱い人はご注意を。
フローズンスタイルと呼ばれるシャーベット状になったカクテルで、暑い夏にピッタリのドリンクです。飲み口の広いソーサー型のシャンパングラスを使い、ホワイト・ラム、柑橘系リキュールのホワイト・キュラソー、ライム・ジュース、シロップ、クラッシュアイスをブレンダー(ミキサー)に入れてシャーベット状にしてグラスに移し、スライスしたライムやミントの葉をデコレーションし、2本の短いストローを添えます。
ベースのホワイト・ラムをテキーラに替え、グラスをスノー・スタイルにすると「フローズン・マルガリータ」と呼ばれます。フローズンカクテルはストローを添えるのが「正統」と言われますが、フローズン・マルガリータには塩のデコレーションがあるのでストローを添えないのが一般的です。
フローズンスタイルのカクテルはちょっと手間がかかるので、オーダーがたて込んでいたりすると供されるのに時間がかかることがあるので様子を見ながらオーダーしましょう。スタッフの多い大型のバーやホテルのバーの方が注文しやすいと思います。
ミントの刺激とライムの酸味が好きなら試してみたい夏の定番カクテルです。グラスに砂糖とカットライム、ミントの葉を入れモヒート・ペストル(マドラーで代用可)で潰します。そこへ、クラッシュアイスを入れホワイト・ラムを注ぎ、最後にソーダを静かに入れます。
お店によってはマドラーが添えられることもあります。その場合はマドラーでミントやライムを潰しながら飲むといいでしょう。ただし、ライムの皮やミントの茎には苦味があるので、ライムの果肉とミントの葉を潰すだけにしましょう。
食前のアペリティフカクテルとしてもピッタリですので「食事の前にバーで一杯引っ掛ける」のにいいかも知れません。
インパクトのあるデコレーションで人気のホーゼスネック。レモンの皮を螺旋状に剥き、その一個分の皮を丸ごとグラスに入れて端をグラスの縁に引っ掛けるというダイナミックなデコレーションです。そこへ氷を入れ、ブランデーを注いでジンジャエールで満たすというカクテルです。普通はレモンの果汁は入れませんが、レモンの皮の爽やかな香りが鼻孔をくすぐります。
ベースのスピリッツの指定がなければ、ブランデーを使うのが一般的です。他のスピリッツにしたい場合は「ウイスキー・ホーセズネック」「ジン・ホーゼスネック」「ウォッカ・ホーゼスネック」などとオーダーしますが、するとさらに「銘柄は?」などと聞かれると思いますので、ビギナーは普通に「ホーゼスネック」でいいでしょう。
グラスに氷とライムジュース、ホワイト・ラムを入れてコーラで満たし、カットライムやスライスライムをデコレーションするシンプルなカクテルです。コーラの甘さと風味に加えライムの爽やかさで、とても飲みやすいカクテルです。アルコールが入っているのを忘れてしまいそうな呑口なので、アルコールに弱い人は注意しましょう。「キューバ・リバー」と呼ばれることもあります。
女性を酔わせるためのカクテルとして知られています。氷を入れたグラスにウォッカとオレンジジュースというシンプルさ。あとはカットオレンジかスライス・オレンジをデコレーションします。キューバ・リブレと同様にアルコールを感じにくいのでついつい飲みすぎてしまいますので注意しましょう。
アメリカのどこかの工場作業員が、かき混ぜるときにマドラーの代わりにねじ回しを使ったのが始まりとの説があります。混ざりやすい材料なのでステアかビルドで十分ですが、バーによっては、わざわざグレナデンシロップを加えてシェイクして作るバーテンダーもいます。ホテルのバーなどで見かけますが、ちょっと大げさなパフォーマンスかも。
グラスでビルドするだけででき上がるのが多いロングカクテルですが、カクテルを注文するなら、華のあるシェーキングも楽しみたいところ。そんなカクテルで定番なのがジン・フィズです。
氷を詰めたシェーカーにジンとレモンジュースと砂糖を入れてシェーキングします。それを氷の入ったグラスに注ぎ、ソーダで満たして軽くビルドします。カットレモンやスライスレモンをデコレーションすればできあがり。
「フィズ」とは、スピリッツやリキュールにレモン果汁と砂糖を加えて混ぜ、ソーダで割ったドリンクです。「ジン・フィズ」が最もポピュラーですが、昭和40年代のバー全盛期にはカカオ・リキュールを使ったカカオ・フィズやヴァイオレット・リキュールを使ったヴァイオレット・フィズも人気がありました。今、注文すると「いつの時代の人?」と思われそうです。
お酒を飲めない人、まさに「子供用」のカクテルがこのシャーリー・テンプルです。アメリカで禁酒法が終わった1930年代、家族連れでお酒を飲みに行くのに、子どもたちもその雰囲気を楽しめるようにと考案されたとのこと。名前の由来は当時人気のあった子役の名前で、メンソレータムのパッケージのモデルなのだとか。
グラスに氷を入れてジンジャエールを注ぎ、グレナデンシロップを垂らしデコレーションにレモンを飾るというもの。まったくお酒がダメな人で、バーの雰囲気だけは味わいたいという人はぜひどうぞ。
その他にも、ここで取り上げたカクテルで「ベースのスピリッツ抜き」にすると、いずれもノンアルコールカクテルカクテルになります。バーテンダーさんに「○○カクテルのアルコール抜きで」とオーダーすると作ってくれるはずです。