ウイスキーやブランデー、スピリッツなどの蒸留酒は、だいたいアルコール度数が40度以上と高いので、何かで割って飲むことが多いです。バーでお酒を注文すると「飲み方はどういたしましょう?」ときかれますので、ここではウイスキーを例に、いろんな飲み方をご紹介します。
文字通り、ボトルからグラスに注がれたそのままの、直球勝負の飲み方で、西部劇でカウボーイが酒場のカウンターでグッとあおっている飲み方です。「強いお酒を強いまま飲む」、この強烈な刺激をガンマンの銃にたとえて「ショット」言うようになり、ストレートで飲むための小さなグラスは「ショット・グラス」と呼ばれます。お店によっては、「リキュール・グラス」という小さな脚付きグラスで供される場合もあります。
また、モルトウイスキーにこだわりの強いお店などで「ストレートで」と注文すると、ワイングラスのように脚の付いた100~200mlの「テイスティング・グラス」で供される場合もあります。
ウイスキーのアルコール度数は、多くは40度のものですが、中には50度や60度と高いものもあります。ストレートは、香りや味を楽しむと同時にアルコールの刺激も感じたいという人向けの飲み方です。ストレートで飲むときは、必ず水(チェイサー)もオーダーして一緒に飲むようにしましょう。
なお、ストレートと同義で「ニート(Neat)」とも言います。日本では引きこもりを指すような、どこかネガティブな印象を与えそうですが、ニートには「きちんとした」「小ざっぱりした」という意味があるので、潔い飲み方でもあります。飲み方を問われて「ニートで」と答えると、バーテンダーは「手強そうなお客さんだ」と心を引き締めることでしょう。
ウイスキーを氷だけで飲む飲み方で、単に「ロック」と言う場合が多いです。「ロック・グラス」や「オールド・ファッションド・グラス」と呼ばれる平底のグラスに注がれます。氷は球形だったり、ダイヤカットだったり、好みによってはクラックドアイスで飲まれます。
氷が入る分、口当たりはストレートに比べて優しいですが、最初のひと口やふた口は当たりが強いので、やはりチェイサーの水を飲みながら楽しみましょう。
ハイボールが市民権を得るまでは日本で主流だった飲み方です。グラスにクラックドアイスかキューブド・アイスを入れ、ウイスキーを注いでバースプーンでよく混ぜてグラスとウイスキーを冷やし、水を加えて再び混ぜて供されます。ウイスキー1に対し水が2~2.5という比率でアルコール度数は15度程度になります。「濃いめ」「薄いめ」の好みがあればバーテンダーに伝えましょう。
「とりあえずハイボール」と言われるほど広く浸透した、ウイスキーをソーダで割る飲み方です。水割りと同じく「タンブラー」と呼ばれるグラスで供されますが、お店によっては水割りより大きめのタンブラーで供されます。居酒屋などではジョッキで出てくることもあります。
グラスにたっぷりの氷を入れ、バースプーンで混ぜてグラスを冷やし、溶けた水を捨てて氷を足します。そこへウイスキーを注ぎ冷えたソーダを注ぎます。最後に「おまじない」のごとく再びバースプーンで軽く混ぜますが、炭酸の気が抜けるのが嫌な場合、「混ぜないで(ステアしないで)ください」と言ってください。
レモンを加えたり、レモンピール(レモンの皮)で香りづけをする場合もあります。
オン・ザ・ロックスの変化版と言った飲み方で、ウイスキーと水を1対1の割合で割ったロックのスタイルで供されます。水割りよりは濃いけれど、ロックよりはマイルドな口当たりでウイスキーを楽しむ飲み方です。ロックで飲むのはキツイけど、水割りだと物足りないという人に。
オン・ザ・ロックスがハーフロックに変化して、さらに進化したのがハーフソーダ。ウイスキーとソーダを1対1で割るオン・ザ・ロックスです。ウイスキーの華やか香りが立ち上る飲み方です。ローカルネタですが、大阪のバーでは「ソーダをちょっと足す」という意味で「ちょいソー」と呼ばれたりしています。
ウイスキー1に常温の水1で割る飲み方。ウイスキーのテイスティングをするときの飲み方で、グラスもテイスティンググラスを使います。常温でアルコール度数も半分になることから、ウイスキーの香りがよく開き味も利き分けやすいと言われる、ウイスキー通のこだわりの飲み方です。
オン・ザ・ロックスのグラスに細かく砕いたクラッシュド・アイスをたっぷり詰め、ウイスキーを注いでバースプーンで混ぜて供されます。ミストは「霧」の意味で、たっぷりの細かい氷で急激に冷やすのでグラスの周りが霧をまとったように見えることから名付けられました。キンキンに冷やされるので、清涼感ある夏向きの飲み方です。レモンやレモンピールを加えるお店もあります。 オン・ザ・ロックスのカテゴリーの飲み方ですが、よく冷える分氷が溶けるのも早く水っぽくなりやすいのでご注意を。
水割りの一種ですが、混ぜないで供されます。タンブラーに氷と水を入れてよく混ぜて冷やしたあと、バースプーンの背に沿わすように静かにウイスキーを注ぎます。ウイスキーは水より比重が軽いので、氷水のグラスにウイスキーが浮いたようになります。飲むたびに口当たりや味わいが変化する面白い飲み方です。
ウイスキーのお湯割りです。耐熱グラスにお湯を注いでグラスを温めてから捨て、ウイスキーを注いで再びお湯を入れて混ぜます。そのままでも楽しめますが、レモンピールやシナモンスティック、クローブ(丁子)などをトッピングする場合もあります。
バーでは、ハイボールも水割りもカクテルの一種です。ウイスキーの飲み方一つにも、氷、水、ソーダ、お湯と、いろいろなバリエーションがあるのをお楽しみください。
最近、これこそカクテルのジャンルに入る飲み方で、新しいウイスキーの飲み方が出始めましたのでご紹介させていただきます。スタンダードクラスのウイスキーが、ワンランク上がったような感じになる面白い飲み方です。
1. まず、スタンダードクラスのウイスキーで水割りやハイボールを作ります。
2. そこへ、スタンダードクラスと同系統のプレミアムウイスキーを霧吹きで吹きかけて仕上げます。
個性の強いモルトウイスキーやバーボンウイスキー、ハイクラスのブレンデッドウイスキーなど、ベースになっているスタンダードクラスのウイスキーと同系統のプレミアムウイスキーを吹きかけます。
霧吹きでなく、ビターズボトル(カクテルで苦味のリキュールをエッセンスとして数滴注ぐための小さなボトル)を使ってほんの少し垂らす方法もあります。
まだ正式に命名されていない飲み方(カクテル?)でバーテンダーでも知らない人が多いと思いますので、そんな飲ませ方をするバーはちょっと先を行ってるかも知れません。
ウイスキーの飲み方をご紹介しましたが、バービギナーに注意したいのが「一杯はおなじ一杯」ということ。40度のウイスキーをそのままストレートで飲もうが、グビグビとハイボールで飲もうが、度数は変わっても摂取するアルコール量はどれも同じです。まぁ、おおむね強い飲み方をする人はお酒にも強い人が多いですが、当たりの強い飲み方をする人がお酒にも強いとは限らないし、水割りをチビチビ飲むけれど何杯も飲む人もいます。
オーセンティック系のバーで「ショット・バー」と名乗っているバーがありますが、「ショット」はウイスキーなど蒸留酒の1杯を「ワン・ショット」と言うことに由来しています。この店はボトルキープ制ではなくて一杯ずつの量り売りのバーですよ、との意味です。で、この「ワン・ショット」はどれぐらいの量なのかですが、だいたい基本は30mlでお店によってまちまちです。
バーテンダーが使うメジャーカップ(計量カップ)は鼓型になっていて、標準的なものは30mlと45mlになっています。基本30mlで「シングル」、この2倍が「ダブル」。その間の45mlを「ジガー」と言います。アメリカではワン・ショットが30ml、イングランドが45ml、スコットランドが60mlで、日本のバーでも30mlか45mlか60mlのどれかが基準になっています。
しかし、いちいち計量はしないバーテンダーもいます。45mlのカップで測りながら30mlぐらいしか入れないバーテンダーもいれば、30mlのカップを使ってわざと溢れさせながらグラスに注ぐバーテンダーもおり、正直、ちゃんとした量は分かりません。ウイスキーを計量するのはバーテンダーのテクニックなのです。お店でバーテンダーの手元を観察するか、直に聞いてみるしかないようです。
なお、ダブル(60ml)を基本にしているお店で、自分には濃いので「ハーフ(30ml)で」と注文しても値段が半分になるわけではありません。
サントリートリス<クラシック>
ブラックニッカクリア
サントリーレッド
ハイニッカ
サントリーリザーブ、サントリー角瓶、サントリーホワイト、サントリートリス<エクストラ>
ブラックニッカリッチブレンド、キリン樽薫る
ホワイトホース、J&B、I.W.ハーパー、フォアローゼズ、ティーチャーズ、バランタインファイネスト、アーリータイムズ、ジムビーム、ジャックダニエル、カナディアンクラブ、シーバスリーガル、デュワーズホワイトラベル、カティーサーク、グレンフィディック、ジョニーウォーカー赤、ジョニーウォーカー黒、シーバスリーガル12年、オールドパー
サントリー山崎、サントリー白州、サントリー響、サントリーローヤル、サントリーオールド、サントリー知多、ニッカ竹鶴、スーパーニッカ、ザ・ニッカ
I.W,ハーパー12年、フォアローゼズプラチナ
ニッカ余市、ニッカ宮城峡、ニッカカフェグレーン、ニッカカフェモルト、ブラックニッカディープブレンド、メーカーズマーク
ブラントン
キリン富士山麓シグニチャーブレンド
キリン陸
ワイルドターキー8年
ニッカフロム・ザ・バレル
51度 | ニッカフロム・ザ・バレル |
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50度 | キリン富士山麓シグニチャーブレンド キリン陸 ワイルドターキー8年 |
46.5度 | ブラントン |
45度 | ニッカ余市、ニッカ宮城峡、 ニッカカフェグレーン、ニッカカフェモルト ブラックニッカディープブレンド メーカーズマーク |
43度 | サントリー山崎、サントリー白州、サントリー響、サントリーローヤル、サントリーオールド、サントリー知多 ニッカ竹鶴、スーパーニッカ、ザ・ニッカ I.W,ハーパー12年 フォアローゼズプラチナ |
40度 | サントリーリザーブ、サントリー角瓶、サントリーホワイト、サントリートリス<エクストラ> ブラックニッカリッチブレンド キリン樽薫る ホワイトホース、J&B、I.W.ハーパー、フォアローゼズ、ティーチャーズ、バランタインファイネスト、アーリータイムズ、ジムビーム、ジャックダニエル、カナディアンクラブ、シーバスリーガル、デュワーズホワイトラベル、カティーサーク、グレンフィディック、ジョニーウォーカー赤、ジョニーウォーカー黒、シーバスリーガル12年、オールドパー |
39度 | サントリーレッド ハイニッカ |
37度 | サントリートリス<クラシック> ブラックニッカクリア |
お酒を「冷やして飲む」「氷を入れて飲む」のが一般的なバーでは、「氷」が重要な役割を担います。
バーで使われる氷は、家庭で作る氷とは量も質も違います。家庭の冷蔵庫で作る氷は水をマイナス20度ほどの温度で急速冷凍するので、先に表面が凍り、塩素などの不純物や空気を閉じ込めたまま凍らせるため白っぽい氷になってしまいます。
一方、バーで使う氷は、業務用の製氷機で作る氷か、氷屋さんから仕入れる透明度の高い氷です。
業務用製氷機で作る氷もマイナス25度ほどの急速冷凍で作りますが、家庭用冷蔵庫の冷凍室とは違い、製氷皿を天地逆にして下から水を噴霧しながら徐々に凍らせる「セル式」と呼ばれる方法で作られます。水道水を使いますが、不純物が流れ落ち空気も入りにくくなります
氷屋さんの氷は、製氷缶と呼ばれる容器にろ過して不純物を取り除いた原水を入れ、撹拌しながら空気を取り除きマイナス10度ほどの温度でゆっくりと凍らせて製氷します。
バーで業務用製氷機の氷を使うか氷屋さんから仕入れるかその両方かは、コストやお店のポリシーによって違ってきますが、氷屋さんの氷は硬く締まっていて業務用製氷機の氷に比べて溶けにくい、無味無臭で純水(純氷)だという特徴があります。カジュアルなバーなら製氷機の氷を使うでしょうが、ホテルのバーや街のオーセンティックバーでは氷屋さんから仕入れた氷を使います。
バーで使う氷はいろいろな種類があります。氷屋さんから仕入れる氷は、かき氷屋さんの氷と同じ、大きなブロック状の氷です。あらかじめ目的の大きさや形にカットしてあるものもありますが、数える単位が尺貫法の「貫」を使うので貫目氷(かんめごおり)と呼ばれる一貫目(3.75kg)の氷をカットしたり砕いたりして使います。
お酒をオン・ザ・ロックで飲むときに使われるのが「ランプオブアイス」という握りこぶし大の氷。バーによっては、四角い塊の氷を球形にしたり「ダイヤモンドカット」や「ブリリアンカット」と呼ばれる宝石のようなカットを施すお店もあります。球形の氷は表面積が小さいので溶けにくく、お酒が薄まりにくいので美味しいオン・ザ・ロックがいただけます。ダイヤモンドカットの氷は多面形なのでお店のライトをいろんな角度から反射させ万華鏡のように華やかです。
水割りやソーダ割、シェークやステアでカクテルを作るときなど、いろんなシーンで使われるのが「クラックドアイス」です。かち割り氷や3立方cmぐらいのキューブアイスで、グラスに当たる音がカラカラと心地よく、アルコールとともに心をリラックスさせてくれる効果があるようです。
さらに細かく砕いたものが「クラッシュアイス」です。「モヒート」や「ミントジュレップ」などのカクテルや、キンキンに冷やして飲む「ミスト」という飲み方に使われます。
バーで重要な役割を持つ氷。いろんな使われ方をしているので、バーへ行ったらお酒とともに氷にも注目してみてください。
カクテルが誕生したのは紀元前の古代ローマ時代と言われています。1879年にドイツで製氷機が開発され、冷たい飲み物が広く飲まれるようになってから、バーでカクテルが飲まれるようになりました。バーではカクテルはもちろん、ハイボールや水割り、オンザロックなど、いろんなシーンで氷が登場します。お酒が主役ならば、氷は主役を引き立てる相手役といったところでしょうか。